新種の小型巻貝「プロバイカリア・オオクライ」化石
千葉県立中央博物館の伊左治鎭司博士による研究の結果、平成22(2010)年に大野市下山の手取層群伊月層(約1億2700万年前:前期白亜紀)より採集された岩石から、新種の小型巻貝化石が発見されました。その研究成果が日本古生物学会の国際学術誌「Paleontological Research(パレオントロジカル・リサーチ)」に論文として発表され、新種の小型巻貝は「プロバイカリア・オオクライ」と命名されました。
新種の小型巻貝「プロバイカリア・オオクライ」化石の発見場所。大野市下山の手取層群伊月層から発見された。地図中のグレーは手取層群の分布を示す。
プロバイカリア・オオクライ
新種の小型巻貝「プロバイカリア・オオクライ」化石[写真提供:千葉県立中央博物館 伊左治鎭司]。スケールの1マスは1㎜を示す。
学名
Probaicalia okurai(プロバイカリア・オオクライ)
※伊左治博士の野外調査に協力した化石ハンターの故・大倉正敏氏(愛知県江南市)に敬意を表して献名
分類
クビキレガイ上科に属する絶滅したグループ
特徴
・小さく、細長い(大きい個体でも殻の高さが5mmほど)
・殻の表面に螺肋(巻貝の成長に伴ってできる横筋)が3本ある
・同属の他種との違いは、螺肋が著しく発達し、螺肋の一つは反り上がったりコブ状になる点
発見の意義
大野市に分布する前期白亜紀の地層である手取層群伊月層は、福井県最古の恐竜化石(獣脚類のティラノサウルス類、テタヌラ類、鳥脚類のイグアノドン類)が発掘されることで有名で、勝山市に分布する同層群北谷層では見られない様々な動植物の化石が発見されています。伊月層で発見される巻貝の化石は、目につきやすい大型種はこれまで知られていましたが、小型種はほとんど注目されていませんでした。
小型巻貝のプロバイカリア属は、中国、韓国、ロシア、日本などで化石が発見され、これまでに8種が記載されています。大野市で発見された本属の化石は、螺肋の一つが反り上がったりコブ状になる点で他種と異なることが明らかとなり、日本で初めて本属の新種「プロバイカリア・オオクライ」として記載されました。プロバイカリア・オオクライは、伊月層内の蛇行河川が発達し氾濫原が形成されたことを示す地層から産出することなどから、湖沼に生息した種類だと考えられます。このように、大野市の手取層群における貝化石の調査研究は、東アジアの前期白亜紀の陸域生態系を理解し、当時の福井県の環境がどのように推移したのかを読み解くことにつながっています。
新種の小型巻貝「プロバイカリア・オオクライ」が生息していた時代。
化石の研究論文
タイトル
Molluscan Faunal Changes from Brackish to Freshwater Deposits in the Lower Cretaceous Itsuki Formation of the Tetori Group, Japan
[和訳:手取層群伊月層(下部白亜系)の汽水成~淡水成堆積物から産出する貝類化石群集の変遷]
著者
伊左治鎭司(千葉県立中央博物館)
雑誌
日本古生物学会英文誌 Paleontological Research(パレオントロジカル・リサーチ)
出版日
令和5(2023)年4月5日 オンライン出版、令和6(2024)年1月1日 冊子版発行
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