館長のごあいさつ
館長のごあいさつ
森 誠一館長
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この仲間は本来北方系の魚であり冷水性であるため、特に本州のおける淡水集団の生息には、夏期の水温が20℃を越えない湧水が必要です。その湧水が大野盆地には豊富であることから、イトヨの生息が可能であったわけなのです。それは30万年くらい前から他のイトヨ集団と分化し、大野市独特の遺伝的集団が誕生したと推定されています。つまり、この地における地域特性を顕著に持っている自然物なのです。
イトヨには淡水域で一生過ごす淡水型と、河川と海を行き来する遡河型という2つのタイプがいます。この淡水型イトヨは各地に分布する集団ごとに、分化の程度が大きく異なっています。また、その生態は、雄がなわばりを持ち、そこに巣を作って繁殖するという特異な習性をもっています。1930年代以降、ティンバーゲン博士の行動連鎖モデルに関する研究以来、イトヨは実に様々な生物学の分野で多くの研究がされています。そうした科学的成果を今後、保全の在り方に対して効果的に反映させていく必要があります。
つまり、上記のことからも、大野市のイトヨは希少性、地域性、学術性といった観点から、きわめて特徴的な性質をもっている存在と言えるのです。このイトヨをこの地で永続的に生息できるようにするためには、もちろん、イトヨだけを対象にするものではありません。絶滅に瀕している理由のほとんどが人間生活と密接な関係がある以上、科学的成果の活用は人間の意識や社会構造に対しても提言的かつ計画的でなければなりません。
これから、