田村又左衛門家屋敷

田村又左衛門家(またざえもんけ)屋敷は、当時の越前大野城外堀（百間堀）西側の三の丸に所在しています。同家は、宝暦9年（1759）に、田村左兵衛家(さひょうえけ)の二男央俊(てるとし)が百石を分知され分家したことに始まります。安永2年（1773）には、三の丸に屋敷を拝領し、「三の丸田村(さんのまるたむら)」と通称されました。二代俊強(としたけ)は天保8年（1837）に大野藩の家老を務め、同10年（1839）に二百石から三百石に加増されました。

屋敷内の建造物のうち主屋は、文政10年（1827）に大野町で起きた大火の後に、矢村（現在の大野市矢）の農家を移築し、武家住宅に改築したものです。また、住宅東側に広がる庭園の築山は、越前大野城外堀の土居を転用したものです。※土居は土塁とも呼ばれる城を守るための防御施設。土を盛り上げて土手を造り、敵の侵入を防ぐためのものです。越前大野城の土居は城の外堀沿いに設けられていましたが、現在は田村家の庭園内にのこるのみとなっています。

田村又左衛門家(またざえもんけ)屋敷には、近世の武家住宅の遺構が残るなど、大野藩上級武家屋敷の様相を留めており、大野城下の構造を知る上で貴重な史跡であるため、大野市の文化財に指定しています。