日本初産出 恐竜時代のカメ類 マンチュロケリス属の化石
2001年、福井県在住の島田正樹氏が福井県大野市長野に分布する手取層群からカメ類の甲羅化石を発見しました。早稲田大学教授の平山 廉氏と福井県立恐竜博物館研究員の薗田哲平氏からなる研究チームがこの化石を詳しく調べた結果、国内初産出のマンチュロケリス属(不明種)のものとわかりました。この大野市産標本は新種の可能性がありますが、証拠が十分ではないため、今後の新たな追加標本の発見が待たれます。
実物化石は、和泉郷土資料館にて一般公開されています。
発見された化石
肋板
欠損部あり、49mm幅が残存。背面の中軸部が顕著に凹むなどの特徴があります。
右下腹甲
欠損部あり、主に外側部の前後長66mmが残存。
同定結果・根拠
- 肋板に見られる「背面の中軸部が顕著に凹む」という特徴は、カメ類の中でも中国遼寧省産のマンチュロケリス・マンチュウコウエンシスにのみ認められる特異な形質であり、少なくとも大野市産標本はマンチュロケリス属に同定することができます。
- 大野市産マンチュロケリス属標本の推定甲長(甲羅の長さ)は、30cm以上に達します。この推定甲長は、遼寧省産のマンチュロケリス・マンチュウコウエンシスの2倍ほどあることや、肋板表面の線状彫刻の違いなどの特徴で明らかに異なります。このことから、大野市産標本は、マンチュロケリス・マンチュウコウエンシスとは別種であると考えられます。
発見の意義
国内初の発見
マンチュロケリス属は、中国の前期白亜紀の地層からの報告にこれまで限定されてきたカメ類のグループでしたが、今回、大野市の手取層群から属レベルで共通するカメ類が産出することが国内で初めて確認されました。この発見は、当時の東アジアにおける陸域生態系の復元及び生物多様性の解明に大きく貢献するものと期待されます。
新種の可能性
大野市産マンチュロケリス属標本は、中国遼寧省産のマンチュロケリス・マンチュウコウエンシスとは別種であると考えられ、新種の可能性があります。しかし、発見部位が少なく証拠が十分ではないため、今後の新たな追加標本の発見が待たれます。
化石の研究論文
タイトル
福井県大野市九頭竜地域の下部白亜系手取層群より産出した化石カメ類
著者
平山 廉(早稲田大学)
薗田哲平(福井県立恐竜博物館)
酒井佑輔(大野市教育委員会)
伊左治鎭司(千葉県立中央博物館)
大倉正敏
雑誌
Waseda Global Forum(早稲田大学国際教養学部紀要)
化石画像等
大野市産マンチュロケリス属の発見部位
マンチュロケリスの復元画(画像提供 おさとみ麻美)
補足説明
マンチュロケリス属について
マンチュロケリス属は、マンチュロケリス・マンチュウコウエンシスのみの1種からなるカメ類のグループです。マンチュロケリス・マンチュウコウエンシスの化石は、これまでに中国遼寧省と内モンゴル自治区の前期白亜紀の地層から発見されています。