
ひのし
布の皺をのばすための道具です。金属製の器に炭火を入れて熱し、温まった器の底を布に押し当てて皺をのばします。江戸時代には使われていました。
同様の役割をもつ道具として、明治時代に炭火アイロンが、大正時代に電気アイロンが登場します。昭和になって電気アイロンが普及すると、ひのしはほとんど使われなくなりました。

炭火アイロン
炭火を入れる器の部分に蓋が無いため、火の粉が飛んで服がこげてしまうこともありました。また、温度調整がうまくいかず、布地を傷めてしまうこともありました。
このように、ひのしで布を傷めることを「ひのしずり」と言いますが、この言葉は江戸時代に書かれた『浮世風呂』という本にも出てきます。銭湯で会話を楽しんでいる女性の一人が、ひのしずりしてしまったことに対してお姑さんが繰り返し小言を言ってくるのだと困ったように話しています。